20年位前のことですが、私が福岡に向かう飛行機に搭乗している時に、人生の中で一番激しい頭痛を経験しました。その日は天気も穏やかで揺れることもなく、機内でウトウトしていたのですが、飛行機が下降し始め着陸体勢に入った時、突然左眼の奥からおでこにかけて激しい痛みが出現しました。痛みは激烈で、医者である私も一瞬何が起きたのか分からない状況でした。 「くも膜下出血?? 三叉神経痛?? とは違うよな、、、、」とあやふやな根拠でそのままにしていたのですが、現在ではこのような頭痛は「飛行機頭痛」として知られています。
飛行機頭痛 イラスト
 飛行機頭痛とは、飛行機に搭乗している時にのみ起こる頭痛で、突き刺すような、又は殴られたような激しい痛みが、突然、片側の眼の奥から前頭部に出現します。およそ30分以内には改善するのが普通です。飛行機の上昇、下降に伴う機内の気圧の変化が関係するようで、主に下降している時に出現します。正確な原因は分かっておりませんが、副鼻腔が関与していると思われます。副鼻腔とは、鼻腔に隣接した骨の中にある空洞であり、ヒトでは前頭洞、篩骨洞(シコツ洞)、上顎洞、蝶形骨洞の4つがあります。

Created for the National Cancer Institute, http://www.cancer.gov

 飛行機は離陸すると次第に機内の気圧が下がり始め、上空では気圧が低い状態で保たれます。そのため副鼻腔内も気圧が低い状態にあります。その後、飛行機の下降に伴い機内の気圧は上昇します。通常は副鼻腔と外気は交通して副鼻腔内の圧も上昇するのですが、鼻炎や副鼻腔炎がある場合は、気圧の上昇がスムーズに行なわれず、何らかのきっかけで急激に空気が気圧の低い副鼻腔へと入りこむことによって副鼻腔内の組織に 影響を与え、痛みが出現すると考えられます。副鼻腔の中でも篩骨洞が最も重要と考えられています。篩骨洞は眼の内側とその奥に存在し、飛行機頭痛が起こる部分と一致します。そのため、篩骨洞内の炎症により通気が悪いことによって、気圧の急激な変化が起こり、その部分の感覚神経(三叉神経の第1枝)が刺激され、激しい痛みを発すると考えられます。詳しく知りたい方は、私の知人である白石哲也先生(脳神経外科専門医、リハビリテーション専門医)が、HP「頭の知恵袋」で詳しく紹介していますので是非ご参照ください。https://www.atama-no-chiebukuro.com/about2-c1mhm

 脳ドックを受診された方には、頭部MRI検査の結果報告に「軽度副鼻腔炎」と記載されている方が結構おられるのではないでしょうか? 放射線科の報告医師が、頭蓋内に特に異常がない時に、補足として記載することが多いようです。軽度であれば、耳鼻咽喉科に受診する必要はありませんが、飛行機に搭乗するときは「飛行機頭痛」にご注意ください。

担当: 峯田

頭部MRIでわかる副鼻腔(篩骨洞)の炎症の度合い

矢印部分が篩骨洞です。粘膜の肥厚もなく炎症がほとんどない状態です。

篩骨洞の粘膜が部分的に肥厚し、軽度の炎症を認める状態です。

篩骨洞の炎症が進行し、粘膜肥厚と部分的に粘液貯留を認めます。

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