顔面の痛み ・三叉神経痛と舌咽神経痛・
投稿日:皆さんは、顔面の痛みといえば虫歯だろうと思う方が多いと思います。でも頭の病気でも顔面の痛みが来る場合があります。それも、ビックリするような痛みです。今回は、その中でも三叉神経痛(さんさしんけいつう)と舌咽神経痛(ぜついんしんけいつう)についてご紹介いたします。
三叉神経痛とは
まず、三叉神経とは主に顔面の感覚に関係する神経です。3つに分かれて、オデコ、ホホ、アゴの部分の痛みを感知します。三叉神経痛とは、この神経が何らかの原因で過敏に反応し、突然激しい痛みが出現する病気です。この病気の特徴は、①片側の顔面に、②針で刺されるような、焼け付くような激痛が突然起こり、数秒から30秒くらい続きます。多少個人差はありますが、痛みは電撃痛とも言われ非常に強いものです。大先輩の先生方からは、「昔はお坊さんも痛みに耐えられず自殺してしまった。」、「外科医も自殺したよ。」という怖い話を聞かされました。③痛む場所としては、ホホやアゴの部分が多く、洗顔や歯磨き、食事などで痛みが誘発されることがあり、その恐怖で顔も洗えず、歯も磨けないため、生活に支障を来たしてしまいます。この病気の詳しい説明は、当院HP上の脳神経外科領域の主な疾患(三叉神経痛)を参照してください。
舌咽神経痛とは
舌咽神経はその役目の一つとして、舌の後ろ側1/3の部分や口の奥(扁桃、咽頭)、耳の奥(中耳)の感覚に関係する神経です。この神経も過剰に反応することにより、三叉神経痛と同じように激しい痛みを発することがあります。痛む部位は舌のつけ根から喉(のど)、耳の奥にかけて激痛がするため、歯科や耳鼻咽喉科を受診したりします。三叉神経痛と同じように、食事で物をかんだり飲み込んだりする時に痛みが誘発されることがあり、食事もできなくなります。また、舌咽神経は、心臓の動きを調節する迷走神経という神経の近くを走行しており、稀ではありますが痛み発作と同時に意識を失ったり(失神)、心臓が止まったりしてしまうことがあり注意が必要です。
三叉神経痛や舌咽神経痛の主な原因は、これらの神経の特定の部位を、頭の中の血管が圧迫することにより起こります。その治療法は、まず(カルバマゼピン:商品名テグレトールTM)を内服します。最近ではプレガバリン(商品名:リリカTM)という新しい薬も使えるようになりました。薬で効果が十分でない場合には手術療法を検討します。血管の圧迫から三叉神経や舌咽神経を解放する手術です。また、その他の治療法として神経ブロックやガンマナイフによる治療法があります。顔面痛でお困りの方は、痛みの診断や総合的な治療方針を検討するために、ペインクリニックや脳神経外科を受診しましょう。
脳神経外科ジャーナル 17: 754-760, 2008