飲酒後の転倒、頭部打撲は危険!

 朝晩の冷え込みが厳しい季節になりましたが、週末や週明けの外来には、お酒を飲んで転倒した患者さんが多くいらっしゃいます。
海外の報告によると、救急外来を外傷で受診した患者の20-25%は、受傷前6時間以内にアルコールを摂取していたそうです。

 飲酒をした後は、ケガをする危険率が高くなると言われています。お酒を飲んでいない人と比べて、男性でお酒3杯で6.2倍、5杯で9.5倍、6杯以上で13.8倍にもなります。(1杯1単位、ビール500ml、日本酒1合、ワイン180ml、焼酎110mlに相当)

 これはもちろん、お酒が入ることでふらついて転びやすくなるからですが、転倒した際に、とっさに手が出なかったり受け身が取れなかったりするため、お酒を飲まない状態で転倒する時よりも、頭部や顔面を強く路面に打ち付けてしまいます。ですから、通常なら転んでもそうそう大ケガにならないはずの大人が、飲酒した翌日などに、後頭部に大きなたんこぶや、顔面に青あざを作って外来にいらっしゃるのです。

 また、飲酒が頭部外傷を悪化させるとも言われており、飲酒している場合、受傷後に脳浮腫が強くなるため、病状が重くなると指摘されています。
しかし、私の診療経験からは、飲酒後の頭部外傷が危険な理由として、他にも次のようなことが挙げられます。

・ 転倒後倒れていても、酔って寝ていると誤解されて、通行人が通報しないことがある。

・ 転倒後そのまま自宅に帰って寝込んでしまい、病状が悪化していることに本人も周囲も気づかず、朝方、昏睡状態で発見されることがある。

・ 意識障害があっても、酩酊状態と誤解されて、医療者に重症患者だと判断してもらえず、救急外来での診察が遅れてしまうことがある。

・ 酩酊状態で暴れていたために、十分な診察や迅速な検査が行えないことがある。

 以上のように、お酒を飲んでの転倒は大変危険ですので、飲酒量はほどほどにして楽しむようにしてください。

文責 武川

(参考文献)
Jpn. J. Alcohol & Drug Dependence 46 (1), 140-145, 2011

頭痛、めまい、目のかすみ、そして視力低下。~原田病とは~

先日、当院と同じビル内にある「みどり眼科クリニック」の院長先生と話をする機会がありました。私達のクリニックが引っ越してきてから、原田病の患者さんが増えたとのことでした。当院には頭痛の患者さんが多く受診するのですが、頭痛以外に目のかすみや視力の低下を伴う場合は眼科を受診する様に勧めているからだろうと思われます。

原田病とは、目のぶどう膜に炎症を起こす病気の一つで、両目に網膜剥離が生じて目が見えにくくなる病気です。日本眼科学会が原田病を詳しく解説しています。浦島太郎は原田病だったのではと言われているそうです。興味のある方は是非ご覧ください。

■日本眼科学会|目の病気・原田病
http://www.nichigan.or.jp/public/disease/budo_harada.jsp

原田病は、最初に軽い髄膜炎が起こるため、発熱、のどの痛みなどの風邪症状、頭痛、めまいなどが前駆症状として出現します。目の症状としては、光がまぶしい、目の奥が痛い、目がかすむなどの症状が通常両目に現れます。

片頭痛には、前庭性片頭痛といわれ頭痛と一緒にめまいを伴う場合もあります。また、頭痛の前に前兆を伴う場合があり、目の前がチカチカしたり、また視界がかすみ見えにくくなったりする場合があります。

「頭痛」、「めまい」、「目のかすみ」という症状から、片頭痛を連想し脳神経外科を受診する方も多いのですが、目のかすみが長く続く場合は必ず眼科を受診してください。

■みどり眼科クリニックのURLはこちらです。
http://www.midori-eye-clinic.com/

担当: 峯田

軽症くも膜下出血にご用心

先日、営業職のビジネスマン(40代)が頭痛を主訴に来院しました。6日前の朝、起床した時に首の痛みがあり、寝違えたのかと思ったそうです。仕事中も痛みが続くため、退社後に近くの整形外科を受診したそうです。事情を説明し、後頭部と首の痛みがあるため、ブロック注射を受け、薬(筋肉を和らげる薬と鎮痛薬)を処方されました。それで痛みは改善するのですが、夜中頭痛で目が覚めて眠れない状態だったそうです。それでも会社を休まず、退社後整形外科でのブロック注射を続けたのですが、あまりに改善しないため脳神経外科を受診する様に言われたとのことでした。

診察すると、頭痛があるだけで、手足の麻痺もなく特に異常を認めませんでした。血圧も正常範囲内です。でも、首コリや肩コリから来る緊張性頭痛とは、痛みの程度が異なっていました。そのため頭部MRIを検査したところ、何と「くも膜下出血」が見つかりました。頭部MRAではくも膜下出血の原因である脳動脈瘤も見つかり、また脳の血管は血管攣縮(ケッカンレンシュク)という合併症のため、細くなっている状態でした。

そのため、検査の結果を見ていただき、総合病院での加療が必要であることを説明しました。本人は、私の説明に多少動揺はあるものの、なぜひどい頭痛が続いたのか分かり、また入院、精査,加療が必要であることを理解され、総合病院へすぐに向かってもらいました。

「くも膜下出血」と言えば、バットで殴られたような激しい頭痛があり、片麻痺や意識障害などを伴い救急車で搬送されることが多い病気です。でも、頭痛がするだけでそれ以外に異常を認めない場合もあります。ただの頭痛と思っても、夜も眠れないような頭痛があれば、まず脳神経外科を受診しましょう。

担当:峯田

首から来る手のしびれ~皮膚分節知覚帯・デルマトームとは~

前回は脳から来る両足のしびれについて説明しました。 今回は、首が原因で手がしびれる話です。

皆さんは、頸椎椎間板ヘルニアとか変形性頸部脊椎症などの病気をご存知でしょうか? 一般的には首のヘルニアとか頸椎症といわれ、脊髄から出る末梢神経根を障害することにより手がしびれる病気です。これらの病気から来る手のしびれは、障害される部位によってしびれる場所が異なってきます。

では、手のしびれはどのような神経によって影響されるのでしょうか? まずは下の図をご覧下さい。


引用― https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Grant_1962_663.png

この図はデルマトームといって、どの神経が体の皮膚のどの領域の感覚を支配するかを示しています。脊髄は場所によって、頸髄、胸髄、腰髄、仙髄に分かれます。頸髄からは8対の末梢神経が出て、第1頸神経(C1)から第8頸神経(C8)まであり、頭から両手までの皮膚の感覚を支配しています。その支配の仕方は分節状になっているため、デルマトームを日本語では皮膚分節知覚帯といいます。今回は、首の話ですので胸から下は省略です。

デルマトームを見ますと、第6頸神経 (C6) は手の親指側を支配し、第7頸神経 (C7)は人指し指と中指、第8頸神経 (C8) は薬指と小指側を支配していることがわかります。首のヘルニアや頚椎症ではこれらの神経が障害されることが多く、障害される部位によって首から手の親指側 (C6) や、中指側 (C7) 、または小指側 (C8) 側が分節状にしびれるのが特徴です。デルマトームを知ることにより、自分のしびれはどの神経が障害されているのかを推測することができます。

病院に受診する時は、「先生、最近右手のC6領域がしびれるのですが?」等と尋ねては如何でしょうか? 担当する医師は、びっくりして慎重な態度になるかもしれません。でも「この患者さんは話が早くすみそうだ、、。」と内心喜んでいると思います。

担当:峯田