軽症くも膜下出血にご用心

先日、営業職のビジネスマン(40代)が頭痛を主訴に来院しました。6日前の朝、起床した時に首の痛みがあり、寝違えたのかと思ったそうです。仕事中も痛みが続くため、退社後に近くの整形外科を受診したそうです。事情を説明し、後頭部と首の痛みがあるため、ブロック注射を受け、薬(筋肉を和らげる薬と鎮痛薬)を処方されました。それで痛みは改善するのですが、夜中頭痛で目が覚めて眠れない状態だったそうです。それでも会社を休まず、退社後整形外科でのブロック注射を続けたのですが、あまりに改善しないため脳神経外科を受診する様に言われたとのことでした。

診察すると、頭痛があるだけで、手足の麻痺もなく特に異常を認めませんでした。血圧も正常範囲内です。でも、首コリや肩コリから来る緊張性頭痛とは、痛みの程度が異なっていました。そのため頭部MRIを検査したところ、何と「くも膜下出血」が見つかりました。頭部MRAではくも膜下出血の原因である脳動脈瘤も見つかり、また脳の血管は血管攣縮(ケッカンレンシュク)という合併症のため、細くなっている状態でした。

そのため、検査の結果を見ていただき、総合病院での加療が必要であることを説明しました。本人は、私の説明に多少動揺はあるものの、なぜひどい頭痛が続いたのか分かり、また入院、精査,加療が必要であることを理解され、総合病院へすぐに向かってもらいました。

「くも膜下出血」と言えば、バットで殴られたような激しい頭痛があり、片麻痺や意識障害などを伴い救急車で搬送されることが多い病気です。でも、頭痛がするだけでそれ以外に異常を認めない場合もあります。ただの頭痛と思っても、夜も眠れないような頭痛があれば、まず脳神経外科を受診しましょう。

担当:峯田

首から来る手のしびれ
~皮膚分節知覚帯・デルマトームとは~

前回は脳から来る両足のしびれについて説明しました。 今回は、首が原因で手がしびれる話です。

皆さんは、頸椎椎間板ヘルニアとか変形性頸部脊椎症などの病気をご存知でしょうか? 一般的には首のヘルニアとか頸椎症といわれ、脊髄から出る末梢神経根を障害することにより手がしびれる病気です。これらの病気から来る手のしびれは、障害される部位によってしびれる場所が異なってきます。

では、手のしびれはどのような神経によって影響されるのでしょうか? まずは下の図をご覧下さい。


引用― https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Grant_1962_663.png

この図はデルマトームといって、どの神経が体の皮膚のどの領域の感覚を支配するかを示しています。脊髄は場所によって、頸髄、胸髄、腰髄、仙髄に分かれます。頸髄からは8対の末梢神経が出て、第1頸神経(C1)から第8頸神経(C8)まであり、頭から両手までの皮膚の感覚を支配しています。その支配の仕方は分節状になっているため、デルマトームを日本語では皮膚分節知覚帯といいます。今回は、首の話ですので胸から下は省略です。

デルマトームを見ますと、第6頸神経 (C6) は手の親指側を支配し、第7頸神経 (C7)は人指し指と中指、第8頸神経 (C8) は薬指と小指側を支配していることがわかります。首のヘルニアや頚椎症ではこれらの神経が障害されることが多く、障害される部位によって首から手の親指側 (C6) や、中指側 (C7) 、または小指側 (C8) 側が分節状にしびれるのが特徴です。デルマトームを知ることにより、自分のしびれはどの神経が障害されているのかを推測することができます。

病院に受診する時は、「先生、最近右手のC6領域がしびれるのですが?」等と尋ねては如何でしょうか? 担当する医師は、びっくりして慎重な態度になるかもしれません。でも「この患者さんは話が早くすみそうだ、、。」と内心喜んでいると思います。

担当:峯田

 

脳から来る両足の痺れ ~脳の機能局在とは~

八重洲クリニック脳神経外科は、平成29年1月5日から日本橋の柳屋ビルディング2階に移転しております。当地は日本橋駅に近く中央通りに面しているため、交通の便利がよく皆様から好評を頂いております。中央通りは、東京2020オリンピック・パラリンピックではマラソンコースになっており、また閉会後はパレードも行なわれるであろうと思われます。「診療時間の合間に少しでも見られたらいいな…」と、今からスタッフ一同、心待ちにしております。

パラリンピックも盛んになってきました。元々、パラリンピックとは、パラプレジア(Paraplegia、対麻痺)にオリンピックをあわせた造語です。パラプレジアとは、両足が麻痺した状態を言います。腰部脊髄損傷などで対麻痺を患った方々が車いす競技大会を開催したのが最初のようです。同じような言葉にヘミプレジア(Hemiplegia、片麻痺)という言葉があります。片麻痺とは、右または左半身が麻痺した状態で、脳卒中などで出現します。そのため、両足の症状は腰が原因、半身(手足)の症状は脳が原因と思いがちです。でも脳が原因で両足の痺れや麻痺が出現する場合もあります。何故でしょう? それは、「脳の機能局在」と言う脳の特徴から理解できます。

脳の機能局在とは、簡単に言えば、「脳には、右左や前後などの場所によって異なる機能が存在すること」です。右の脳には、左半身の感覚や運動機能を有する神経細胞が規則正しく存在し、左の脳には同じように右半身の感覚や運動機能を担当する神経細胞が局在しています。それ以外の機能については、今回は省略します。


参照:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Homunculus-ja.png?uselang=ja

上の図は、脳をおよそ両耳に平行に縦に切った断面で、運動神経や感覚神経がどのように分布しているかを示す模式図です。両足の神経細胞は脳の内側に左右接するように存在していますが、手や顔の神経は脳の外側にあり左右の脳で離れた場所にあることがわかります。


脳の病気(脳出血、脳梗塞等)は、通常片側に起こります。そのため、左右の脳で離れた場所にある両手の神経が同時に障害される事はまずありません。しかし、上の図の丸印の部分に病気が生じた場合は、両足のしびれや麻痺が起こります。この部分には、左右の脳の間にある大脳鎌という硬い膜が存在します。そのような膜からは髄膜腫という脳腫瘍が発生することがあり、それによって両足のしびれや麻痺が生じることがあります。

少し難しい話になりましたが、両足にしびれがあり頭痛が段々とひどくなるような場合は、一度脳神経外科を受診してください。

担当: 峯田


大脳鎌髄膜腫の頭部MRI画像(造影剤を使用しています)

 

八重洲クリニックでは「脳からくる痺れ」に関する治療を行っております。
八重洲クリニック「しびれ外来」

 

飛行機内で突然の頭痛!! ・飛行機頭痛とは・

 20年位前のことですが、私が福岡に向かう飛行機に搭乗している時に、人生の中で一番激しい頭痛を経験しました。その日は天気も穏やかで揺れることもなく、機内でウトウトしていたのですが、飛行機が下降し始め着陸体勢に入った時、突然左眼の奥からおでこにかけて激しい痛みが出現しました。痛みは激烈で、医者である私も一瞬何が起きたのか分からない状況でした。 「くも膜下出血?? 三叉神経痛?? とは違うよな、、、、」とあやふやな根拠でそのままにしていたのですが、現在ではこのような頭痛は「飛行機頭痛」として知られています。
飛行機頭痛 イラスト
 飛行機頭痛とは、飛行機に搭乗している時にのみ起こる頭痛で、突き刺すような、又は殴られたような激しい痛みが、突然、片側の眼の奥から前頭部に出現します。およそ30分以内には改善するのが普通です。飛行機の上昇、下降に伴う機内の気圧の変化が関係するようで、主に下降している時に出現します。正確な原因は分かっておりませんが、副鼻腔が関与していると思われます。副鼻腔とは、鼻腔に隣接した骨の中にある空洞であり、ヒトでは前頭洞、篩骨洞(シコツ洞)、上顎洞、蝶形骨洞の4つがあります。

Created for the National Cancer Institute, http://www.cancer.gov

 飛行機は離陸すると次第に機内の気圧が下がり始め、上空では気圧が低い状態で保たれます。そのため副鼻腔内も気圧が低い状態にあります。その後、飛行機の下降に伴い機内の気圧は上昇します。通常は副鼻腔と外気は交通して副鼻腔内の圧も上昇するのですが、鼻炎や副鼻腔炎がある場合は、気圧の上昇がスムーズに行なわれず、何らかのきっかけで急激に空気が気圧の低い副鼻腔へと入りこむことによって副鼻腔内の組織に 影響を与え、痛みが出現すると考えられます。副鼻腔の中でも篩骨洞が最も重要と考えられています。篩骨洞は眼の内側とその奥に存在し、飛行機頭痛が起こる部分と一致します。そのため、篩骨洞内の炎症により通気が悪いことによって、気圧の急激な変化が起こり、その部分の感覚神経(三叉神経の第1枝)が刺激され、激しい痛みを発すると考えられます。詳しく知りたい方は、私の知人である白石哲也先生(脳神経外科専門医、リハビリテーション専門医)が、HP「頭の知恵袋」で詳しく紹介していますので是非ご参照ください。https://www.atama-no-chiebukuro.com/about2-c1mhm

 脳ドックを受診された方には、頭部MRI検査の結果報告に「軽度副鼻腔炎」と記載されている方が結構おられるのではないでしょうか? 放射線科の報告医師が、頭蓋内に特に異常がない時に、補足として記載することが多いようです。軽度であれば、耳鼻咽喉科に受診する必要はありませんが、飛行機に搭乗するときは「飛行機頭痛」にご注意ください。

担当: 峯田

頭部MRIでわかる副鼻腔(篩骨洞)の炎症の度合い

矢印部分が篩骨洞です。粘膜の肥厚もなく炎症がほとんどない状態です。

篩骨洞の粘膜が部分的に肥厚し、軽度の炎症を認める状態です。

篩骨洞の炎症が進行し、粘膜肥厚と部分的に粘液貯留を認めます。

鎮痛薬の飲みすぎで頭痛!?薬物乱用頭痛とは

頭痛で困って外来にいらっしゃる患者さんで、「市販の鎮痛薬を月にひと箱では足らずに、ふた箱買って飲んでいますが、頭痛が続きます。」と話される方がいます。ほぼ毎日、日に1,2回は鎮痛薬を服用している計算になりますが、このような方は、薬物乱用頭痛になっていると言えます。

薬物乱用頭痛とは、頭痛に対して過剰に治療薬が使用されたことで、かえって頭痛が誘発されてしまうことを言います。

具体的には、

①頭痛の頻度は1ヶ月に15日以上

②頭痛薬の使用頻度は1ヶ月に10日あるいは15日以上

といった状態が、3ヶ月以上続いた時に薬物乱用頭痛を疑います。

生理前後や風邪をひいたときなど、ある特定の期間に限って連日鎮痛薬を使う分には問題ありませんが、連日の服用が常態化してしまっている場合には改善が必要です。

薬物乱用頭痛の予防と治療は、

①原因薬物の中止

②薬物中止後に起こる頭痛への代替薬投与

③予防薬の投与

が原則です。単一成分よりも複合薬のほうが、薬物乱用を引き起こしやすいと考えられています。

また、原因薬物の服用中止により、1~6ヶ月間は70%ほどの症例で頭痛の改善が見られますが、長期的には約40%が再び薬物乱用を起こしてしまうようです。

頭痛治療薬の使用頻度を、日頃から月10日以上にならないように管理することが重要と言えます。ご自分で市販薬を買って飲んでいる方で、ちょっと服用頻度が多いかなと気づかれた方は、頭痛外来を受診してご相談されることをお勧めします。

(担当 武川)

八重洲クリニック 脳神経外科「頭痛外来」では、
頭痛に関して、詳しく問診を行い、必要な場合はMRI検査やCT 検査を実施し総合的に診断いたします。

八重洲クリニック「頭痛外来」

 

物忘れ ・その2・ 軽度認知障害とは?

前回は主観的認知障害について説明しました。今回は認知症状がもう一段階進んだ状態といえる「軽度認知障害」について紹介します。

軽度認知障害とは、主観的にも客観的にも認知障害を認めますが、基本的な日常生活機能に支障はなく、認知症とは言えない状態のことを言います。簡単に言うと、本人が物忘れを自覚するだけでなく、家族や周囲の人も「ちょっとおかしい」と心配しているのですが認知症とまでは言えない状態です。そのため、このような方が病院を受診する場合は、家族同伴で受診することが多くなります。

軽度認知障害は、英語ではMild Cognitive Impairment (MCI)といわれ、専門的には「健忘型」と「非健忘型」の2つのタイプがあります。「健忘型」では記憶障害がみられ、「非健忘型」では、少し難しい話を理解できない、または話せない、意欲の低下や性格変化などの症状が多く見られます。軽度認知障害と診断された場合、およそ年間10%の方がアルツハイマー型認知症へと移行する可能性が指摘されています。特に「健忘型」が、アルツハイマー型認知症へと進行することが多いようです。しかし、軽度認知障害と診断されても症状が進行性に悪化するとは限らず、その後の評価で正常と判断されることもあります。そのため、軽度認知障害をなるべく早く診断し、その後の進行を抑えることが大切です。

当院では、軽度認知障害の可能性がある方には、まず本人や家族から記憶障害や認知機能障害の程度を聞かせていただきます。必要な場合は、医師が長谷川式簡易認知症スケールや他の認知機能評価の検査を行ない、画像診断として頭部MRI検査にVSRAD解析を追加しております。VSRAD解析とは、頭部MRI画像データを利用して、主に早期アルツハイマー型認知症の診断を補助するソフトウェアです。アルツハイマー型認知症では、側頭葉の内側に存在する海馬などに特徴的な萎縮が認められることが知られています。この解析を用いることにより、その特徴的な萎縮を捉えることが可能となり診断の参考にしております。

担当:峯田

八重洲クリニック「認知症外来」では、検査等で総合的に認知症の診断を行います。

八重洲クリニック「認知症外来」

 

物忘れ ・その1・ 主観的認知障害とは?

個人差はありますが、人は40歳代や50歳を越えた頃から物忘れを自覚するようです。自分の20歳、30歳代と比較して記憶力が低下していると感じるようになり、「人の名前が出てこない」、「車の鍵など、いつも使っている物の場所が分からなくなる」などを自覚すると、「自分もボケたかな?」と心配になります。そう言う私も、人の名前が思い出せないのは日常茶飯事ですが、先日シャワーで洗髪中、自分がシャンプーを使っているのかリンスを使っているのか分からなくなり不安になってしまいました。友人に相談すると、「泡立ちでわかるだろう…」、「シャンプーとリンス、一体型を使ってはどうか..?」といわれ、その通り!と納得しましたが自分の不安の解消にはなりません。

同じような不安を持つ40歳や50歳代の方が病院を受診することがあります。物忘れがひどくなったと自覚し、アルツハイマー型認知症になるのではと心配しています。この様な方は、主観的認知障害という状態であると言えます。

主観的認知障害とは、主観的に認知機能の低下を自覚しているが客観的には認知機能の低下を認めない状態です。簡単に言えば、本人は自分の認知機能の低下を自覚しているが、他人にはその人の認知機能の低下が認識できない状態です。そのため、病院を受診する場合は、ほとんどの人が一人で来院されます。主観的認知障害は、英語ではSubjective Cognitive Impairment (SCI)といわれ、別名として主観的記憶障害(Subjective Memory Complaints: SMC)といわれます。

皆さんが一番知りたい事は、このような状態からどれくらいの人が今後紹介する「軽度認知障害」、そして認知症へと移行していくのか?だと思いますが、残念ながらまだ詳しくは分かっておりません。勿論、主観的認知障害から症状が進行し認知症まで移行する可能性はありますが、必ずしも移行するものではないと考えられます。

加齢により物忘れを感じる事は、誰でも経験します、そのような時は一人で悩むことなく、まずは信頼できるパートナーや友人に相談することが大切です。また、20歳、30歳代の方に多いようですが、ストレスによる「うつ状態」や生活環境や仕事の環境の変化に適応できない「適応障害」が原因で物忘れを自覚することがあります。そのような場合は、心療内科や精神科を受診しましょう。

担当:峯田

八重洲クリニック「認知症外来」では、検査等で総合的に認知症の診断を行います。

八重洲クリニック「認知症外来」

 

顔面の痛み ・三叉神経痛と舌咽神経痛・

皆さんは、顔面の痛みといえば虫歯だろうと思う方が多いと思います。でも頭の病気でも顔面の痛みが来る場合があります。それも、ビックリするような痛みです。今回は、その中でも三叉神経痛(さんさしんけいつう)と舌咽神経痛(ぜついんしんけいつう)についてご紹介いたします。

三叉神経痛とは

まず、三叉神経とは主に顔面の感覚に関係する神経です。3つに分かれて、オデコ、ホホ、アゴの部分の痛みを感知します。三叉神経痛とは、この神経が何らかの原因で過敏に反応し、突然激しい痛みが出現する病気です。この病気の特徴は、①片側の顔面に、②針で刺されるような、焼け付くような激痛が突然起こり、数秒から30秒くらい続きます。多少個人差はありますが、痛みは電撃痛とも言われ非常に強いものです。大先輩の先生方からは、「昔はお坊さんも痛みに耐えられず自殺してしまった。」、「外科医も自殺したよ。」という怖い話を聞かされました。③痛む場所としては、ホホやアゴの部分が多く、洗顔や歯磨き、食事などで痛みが誘発されることがあり、その恐怖で顔も洗えず、歯も磨けないため、生活に支障を来たしてしまいます。この病気の詳しい説明は、当院HP上の脳神経外科領域の主な疾患(三叉神経痛)を参照してください。

八重洲クリニック 脳神経外科「三叉神経痛とは」

舌咽神経痛とは

舌咽神経はその役目の一つとして、舌の後ろ側1/3の部分や口の奥(扁桃、咽頭)、耳の奥(中耳)の感覚に関係する神経です。この神経も過剰に反応することにより、三叉神経痛と同じように激しい痛みを発することがあります。痛む部位は舌のつけ根から喉(のど)、耳の奥にかけて激痛がするため、歯科や耳鼻咽喉科を受診したりします。三叉神経痛と同じように、食事で物をかんだり飲み込んだりする時に痛みが誘発されることがあり、食事もできなくなります。また、舌咽神経は、心臓の動きを調節する迷走神経という神経の近くを走行しており、稀ではありますが痛み発作と同時に意識を失ったり(失神)、心臓が止まったりしてしまうことがあり注意が必要です。

三叉神経痛や舌咽神経痛の主な原因は、これらの神経の特定の部位を、頭の中の血管が圧迫することにより起こります。その治療法は、まず(カルバマゼピン:商品名テグレトールTM)を内服します。最近ではプレガバリン(商品名:リリカTM)という新しい薬も使えるようになりました。薬で効果が十分でない場合には手術療法を検討します。血管の圧迫から三叉神経や舌咽神経を解放する手術です。また、その他の治療法として神経ブロックやガンマナイフによる治療法があります。顔面痛でお困りの方は、痛みの診断や総合的な治療方針を検討するために、ペインクリニックや脳神経外科を受診しましょう。

八重洲クリニック 脳神経外科

 

三叉神経(V)を血管(SCA)が圧迫している状態

 

三叉神経(V)を血管(SCA)の圧迫から解放した状態

脳神経外科ジャーナル 17: 754-760, 2008

妊娠中や産後の片頭痛と頭痛薬

片頭痛はたいてい10~20代で発症し、男性よりも女性に多い傾向があります。そのため、片頭痛を持つ方が妊娠や出産を経験するケースも多く、「今まで飲んでいた薬が使えるのか」といった相談を外来ではよく受けます。そこで、妊娠期間中や産後の頭痛に関して、お薬の話を中心にまとめてみました。

            一般的に、妊娠期間中は約60~80%の女性患者で片頭痛発作の頻度が減少すると言われています。一方で分娩後は、1ヶ月以内に半数以上の患者で片頭痛が再発します。

【妊娠4週未満】

胎児の器官形成は開始されていないため、この期間に片頭痛薬を数回使用したとしても心配いりません。

【妊娠4週から15週末まで】

器官形成期の絶対過敏期(妊娠4週から7週末)と、一部で分化が続いていて奇形を起こす危険のある相対・比較過敏期(妊娠8週から15週末)までは薬剤の使用は控えてください。

【妊娠16週から分娩まで】

奇形の心配はなくなりますが、胎児の発育や機能的発達に影響する危険があります。特に、バルプロ酸(デパケン、セレニカ)、NSAIDs(ロキソニン、ブルフェンなど)、エルゴタミン(ジヒデルゴット、クリアミン)は危険性が以前より唱えられています。

トリプタン製剤においては、妊娠期間中の使用の安全性は確立されていませんが、スマトリプタン(イミグラン)が妊娠中の使用に関して最も報告が多く、胎児奇形発生の危険性を増加させなかったと報告されています。

片頭痛に対して処方されることもある漢方薬の呉茱萸湯(ごしゅゆとう)は、子宮興奮の作用があるため、妊娠中は慎重投与とされています。

日本頭痛学会が推奨している妊娠期間中の片頭痛治療薬は以下の通りです。

・急性期頓服薬:アセトアミノフェン(カロナール、タイレノール)

・予防薬:投与しないことが望ましい。必要であればβ遮断薬(プロプラノロール)

 

【授乳期】

スマトトリプタンを使用した場合は使用後12時間あけて、その他のトリプタン製剤を使用した場合は、使用後24時間あけて授乳してください。

当院では、原則的にガイドラインに則った薬剤の処方を行いますが、片頭痛にお困りで、治療のご相談をされたい方は、どうぞご来院ください。

八重洲クリニック 脳神経外科

 

参考:日本頭痛学会編集「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」
漢方医薬学雑誌2010, Vol.18 No.4

八重洲クリニック 脳神経外科「片頭痛薬のご紹介」

「突然、記憶が消えてしまう!!」~一過性全健忘とは?~

先日、ビジネスマンが3人、不安そうな顔つきで診察室に来られました。3人のうちの一人Aさん(50代男性)が、昨日大阪から出張で上京し、夜に3人でビール片手に楽しく食事した後、ホテルにチェックインしました。しかし、本日朝になってもAさんは出社してこないため、携帯に電話したところ、「自分はどうしてここにいるのか?」、「昨日の記憶がない?」としどろもどろに答えたようです。そのため二人はホテルからAさんを連れて当院を受診しました。

Aさんは自分の名前や住所などは答えることができますが、なんかおかしい、すっきりしない、自分はどうしたんだ?と訴えます。付き添いの二人は、昨日楽しくお酒を飲んでいたAさんが、突然どうしたのかと驚いています。

このような時に、頭に浮かぶ病気が「一過性全健忘」です。

一過性全健忘とは、突然、数時間前からの記憶がなくなってしまう病気です。自分の名前や住所などは覚えていますが、どうして自分はここにいるのか、などの状況が分からなくなり、何度も同じ質問をしたりします。これは大変だと周りが心配するのですが、症状は通常、24時間以内に消失しますのでご安心ください。Aさんのように中年の方に多く見られる病気です。脳の記憶に関係する海馬(かいば)の機能が一時的に低下するのが原因と考えられています。他の病気と鑑別する必要があり、必ず病院を受診する必要があります。

Aさんを含めて、3人にこの病気について説明し(Aさんは覚えていないと思いますが)、念のため頭部MRI検査行いました。結果は、海馬領域を含め異常はありませんでした。検査が終わった頃には、Aさんは「スッキリした、スッキリした。」といつもの表情に戻ってきたようでしたが、まだ同じ質問をしたりするため、こちらはまだスッキリしません。そのため付き添いの一人の方に、新幹線で家族の待つ新大阪まで同行してもらい、翌日に念のため近くの病院へ受診するよう、紹介状と画像情報が入ったCDを持参させました。数日後、紹介先の病院から報告書が届きました。Aさんは翌日には元通りの状態になり家族も安心しているとのことでした。