昨年、飛行機頭痛について紹介しました。
飛行機内で突然の頭痛!! 飛行機頭痛とは
その後、飛行機頭痛を経験した方が時々受診されるようになりました。中には数回経験している方もおられ、その予防法について尋ねられることがあります。そこで今回は、飛行機頭痛の予防法についてご紹介します。
一番の予防法は、搭乗中つばを飲み込んだり、あくびをしたりして耳の通気を良くすることです。それでも効果がなければ、バルサルバ法(いわゆる耳抜き。鼻をつまみ、口を硬く閉じ、息をゆっくり耳に送り込むようにする。)を試してください。風邪を引いて鼻づまりがある方は、なかなか耳抜きができないことがあるため、離陸前に総合感冒薬や鼻炎予防薬を内服することをお勧めします。
飛行機に搭乗した際は、離陸し高度が上昇している間は誰もが緊張し耳の詰まりに敏感ですが、飛行機が安定飛行に入りドリンクサービスを受けた後は、つい眠くなって耳の詰まりに鈍感になり、そのまま着陸までウトウトしてしまう時もあります。実は、私が飛行機頭痛を経験した時もそのような状況でした。
飛行機が徐々に下降し、着陸体勢に入るアナウンスがありましたら、この予防法を忘れずに行い耳の通気を良くして下さい。それでも頭痛が起こるようであれば、一度頭痛外来を受診してください。
担当:峯田
当クリニックは東京駅近くのビジネス街にあり、頭痛外来の患者さんも大人の方が多いですが、中学生や高校生の患者さんも時々いらっしゃいます。そこで、こどもの頭痛について、2回に分けて解説したいと思います。
今回は、こどもの頭痛の頻度や種類について解説いたします。
頭痛もちの子はどれくらいいるの?
日本における大規模調査で、成人を含めた15歳以上の4029人のうち、慢性・反復性の頭痛がある人の比率(有病率)は30.8%でした。一般的には、3人に1人が頭痛もちということになります。
一方、こどもを対象にした調査では、海外の報告になりますが、頭痛有病率は3~7歳で1.2~3.2%、7~11歳で4~11%、15歳で8~23%であり、少なくともクラスに1~3人程度は頭痛もちの子がいるようです。
こどもではどんな頭痛が多いの?
こどもの頭痛で代表的なものは、一次性頭痛に分類される片頭痛と緊張型頭痛です。報告によって多少ばらつきはありますが、小児では片頭痛が緊張型頭痛より多く、1.5~2:1くらいの比率になります。
他の疾患に起因して痛みが起きる二次性頭痛の原因としては、ウイルス感染や副鼻腔炎などの感染症や頭部外傷が多いです。極めてまれですが、脳腫瘍や脳血管障害といった深刻な疾患も含まれます。
どんなときに検査したらいいの?
こどもが頭痛を訴えたとき、病院に連れて行くか、検査を受けさせるか、親御さんは迷われると思いますが、日本小児神経学会では、次のような症状がある時に検査が必要な頭痛を疑うと述べています。
・歩く時にふらつく。
・手足が動かしづらい。
・毎日のように頭痛と嘔吐がある。
・症状が進行している。
当院の頭痛外来でも、症状の程度や経過をお聞きして、重篤な疾患の可能性が否定できない場合は、CTやMRI検査をお勧めすることもあります。
毎日頭痛が続いて学校に行けない場合
小児慢性連日性頭痛の可能性があります。これは、月15日以上の頭痛が3ヶ月以上持続するものです。頭痛の内容としては、片頭痛と緊張型頭痛が混在していることが多いようです。有病率は5~12歳で1.68%、12~17歳で3.5%で、女児に多い(男児の1.5~3倍)傾向があります。精神疾患、ストレッサーの関与、学校の欠席、睡眠障害といった問題を抱えていることがあり、小児科や心療内科の受診もお勧めします。
次回は、こどもの頭痛に対する治療について、具体例も紹介しながらお話しいたします。
担当:武川
(参考文献・資料)
Sakai F,Igarashi H.Prevalence of migraine in Japan : a nationwide survey. Cephalalgia. 1997 ; 17 : 15-22.
日本頭痛学会ガイドライン http://www.jhsnet.org/GUIDELINE/gl2013/271-289_7.pdf
日本小児神経学会HP https://www.childneuro.jp/
日本小児心身医学会HP http://www.jisinsin.jp/detail/05-yasujima.htm
今やパソコン(以下PC)はあまねく職場、家庭に行き渡っているといえます。しかし、いつからこのような状態になったのかと振り返ってみると、せいぜい20年くらい前からでしかないことに気付きます。
わが国のPC出荷台数がピークに達したのは2000年で、価格もそのころがもっとも高かったようです(このこともPCを使って調べたのですが)。また、Windows Xp が発売されたのも2001年です。初めてストレスなく使えるOSだったと記憶しています。2000年ころからオフィスの机には、一人1台のPCがおかれるようになり、多くの会社員、公務員、秘書、医師、弁護士などが長時間にわたって、それと向き合うようになったのです。
人はPCを使う生活に慣れているのでしょうか?両手をキーボードに載せ、わずか30センチほど先のモニターを見つめる。かつてそのような姿勢を長時間続けたことはありませんでした。それが最近20年くらいの間に急速に広まってきたのです。日常生活の劇的変化といえるでしょう。
慣れない姿勢を強いられたためにでている歪みの一つが頭痛(緊張型頭痛)だと思います。
同じ姿勢を続けるということは同じ筋肉を収縮させているということです。頭の位置を維持している間は僧帽筋、後頭下筋群などを収縮させて頭部、頚部を伸展させています。頭の重さは5キロもありますので、長時間の収縮で筋肉は疲労するでしょう。
また、目を動かすことも、外眼筋という筋肉の役割です。片側に6つずつの外眼筋がありますが、やはり特定の位置を見続けることは、特定の外眼筋を収縮させるのです。眼精疲労の一部はVDT(visual display terminal)症候群といわれていますが、画面を長時間見つめすぎていることが原因です。
PCを1日に7、8時間以上も使っている方の多くが、休みの日に運動もしていないとおっしゃられるのには驚かされます。もともと人類は狩猟や農耕をして、100万年も生き延びてきたことを忘れてはいけません。体を動かさないことは不自然な暮らし方なのです。休日には外に出て体を動かしましょう。
また、PC作業の合間にも運動はできます。僧帽筋は皮膚のすぐ下にあり、後頭部から背中に広がる大きな筋肉です。その上部では後頭骨を起始として肩甲骨、鎖骨外側に停止(付着)しています。肩関節を上下、前後など全方向に動かすことで僧帽筋のストレッチができます。後頭下筋群のストレッチは、頭を持っていろいろな方向に倒しましょう。これらの運動を30分に一度くらい、仕事の合間に行ってください。
目の筋肉の凝りもこまめに解消しましょう。遠くを見て、目をぐるぐる動かしてください。またモニターやキーボードの位置を時々変えてみること、机や椅子の高さを変えてみることも有効だと思います。
このような運動、ストレッチを継続すること、仕事中の姿勢や環境に注意を払うことが頭痛の発生をおさえてくれるはずです。